薬を飲み始めてから、あるいは量が増えてから、「食欲が止まらない」「体重がどんどん増えていく」——そんな変化に戸惑っていませんか。
精神科の薬の中には、体重増加が起こりやすいものと、比較的起こりにくいものがあります。この記事では、その違いと原因、対策について精神科医の立場から解説します。
この記事のポイント
- 体重増加は、脳内の食欲に関わる受容体への作用などが関係している可能性がある
- 薬によって体重増加の起こりやすさに差がある
- 気になる場合は、薬の変更も選択肢の一つだが、必ず主治医と相談して決める
- 自己判断での減薬・中止は禁物
なぜ精神科の薬で体重が増えるのか
精神科の薬の多くは、脳内の様々な受容体に作用することで効果を発揮しますが、その中には食欲や代謝に関わる部分への作用も含まれています。主な要因として、以下のようなものが挙げられます。
- ヒスタミンH1受容体の遮断による食欲増進・眠気
- セロトニン5-HT2C受容体の遮断による満腹感の得にくさ
- D2受容体遮断作用
- 血清中レプチン濃度の上昇(もしくはレプチン受容体の脱感作)
- 糖代謝・脂質代謝への影響
- 眠気や鎮静作用による活動量の低下
体質や薬の量、他の薬との組み合わせによっても影響の出方は変わります。特に個人差が激しく、同じ薬でも体重がほとんど変わらない人もいれば、リスクが低い薬でも大幅に増加する人もいます。遺伝的な基礎が関連としてある可能性も指摘されています。
体重増加が起こりやすい薬・起こりにくい薬(モーズレイ処方ガイドラインより)
| 分類 | 体重増加の傾向 | 代表的な薬剤(一般名/主な商品名) |
|---|---|---|
| 抗精神病薬 | 増加しやすい傾向が比較的強い | オランザピン(ジプレキサ)、クロザピン(クロザリル) |
| 抗精神病薬 | 比較的増加しにくいとされる | アリピプラゾール(エビリファイ)、ルラシドン(ラツーダ)、ブレクスピプラゾール(レキサルティ)、アセナピン(シクレスト)、ハロペリドール(セレネース) |
| 抗うつ薬 | 食欲増進作用が比較的強い | ミルタザピン(レメロン、リフレックス) |
対策として考えられること
体重増加が気になる場合、以下のような対応が検討されます。
- 治療上必要であれば、体重増加のリスクが比較的低いとされる薬への変更を医師と相談する
- 食事内容や間食のタイミングを見直す
- 無理のない範囲での運動習慣を取り入れる
- 定期的に体重・血糖値・脂質などを測定し、1ヶ月で5%以上の増加がある場合は早めに主治医に報告する(モーズレイガイドラインでも推奨)
⚠ 体重増加が気になるからといって、自己判断で薬を減らしたり中止したりしないでください。治療に必要な薬を自己判断で中断すると、症状の再燃・悪化につながることがあります。薬の変更や調整は、必ず主治医と相談しながら進めてください。
こんな時は早めに主治医に相談を
- 短期間で急激に体重が増えている
- 喉の渇き、多尿など糖尿病を疑わせる症状がある
- 健康診断で血糖値や脂質の異常を指摘された
- 体重増加がつらく、服薬の継続に不安を感じている
体重の変化は、治療の満足度や継続のしやすさにも関わる大切なテーマです。一人で抱え込まず、次の診察で率直に相談してみてください。
まとめ
- 体重増加を恐れて薬をやめることで、より一層精神症状が悪化して過食・体重増加が進行することもある
- 精神科の薬による体重増加は、食欲や代謝に関わる受容体への作用などが関係している可能性がある
- 薬の種類によって、体重増加の起こりやすさには違いがある
- 気になる場合は薬の変更も選択肢だが、必ず主治医と相談すること
- 自己判断での中止は禁物
この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。詳しくは免責事項をご覧ください。

