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抗うつ薬を勝手にやめるな!離脱症状(中断症候群)とは

「調子が良くなったから、もう薬をやめたい」「でも急にやめたら、めまいや変な感覚が出て怖い」——抗うつ薬を服用している方の多くが、”やめる時”に不安を抱えます。

抗うつ薬を自己判断で急にやめると、「離脱症状」と呼ばれる不調が起こることがあります。この記事では、その症状・診断の目安・原因・起こりやすい薬、そして正しいやめ方を解説します。

  • 抗うつ薬を急にやめると、離脱症状が起こることがある
  • 中止後5日程度は特に注意
  • 「シャンビリ」と呼ばれるビリビリするような感覚は、その代表的な症状
  • 特にパロキセチン(パキシル)は離脱症状が強く、自己判断でやめるのは非常に危険
  • やめる時は、数週間かけて少しずつ減らすのが基本

離脱症状(中断症候群)とは

離脱症状(中断症候群)とは、抗うつ薬を急に中止したり、大幅に減らしたりした時に生じる、一連の身体・精神症状のことです。多くは中止後2〜3日以内に現れ、数日〜数週間で軽快することが多いとされます。依存や「クセになる」といったものとは異なり、脳が薬のある状態に慣れていたところへ急な変化が加わることで起こる、体の反応です。

主な症状

症状は多彩ですが、代表的なものに以下があります。

  • シャンビリ感:「シャン」とめまいがして「ビリッ」と電気が走るような、独特の感覚。患者さんの間でこう呼ばれています
  • 手足のしびれ
  • めまい、ふらつき
  • 吐き気、食欲不振
  • 頭痛、倦怠感、インフルエンザにかかった時のような体の重さ
  • 不安、イライラ、焦燥感
  • 不眠

離脱症状の診断基準(DESSチェックリスト)

離脱症状を客観的に評価するため、1998年に「Discontinuation Emergent Signs and Symptoms(DESS)」というチェックリストが開発されました。診断の目安として、身体的症状(浮動性めまい、軽い頭痛、回転性めまい、電気ショック様感覚、感覚麻痺、疲労、頭痛、嘔気、振戦、下痢、視覚障害)と心理的症状(不安、不眠、イライラ感)の両方を含み、それらに関連して著しい苦痛を伴うものとされています。

この基準を用いた研究では、パロキセチン(パキシル)群のみ、他のSSRI(フルオキセチン・セルトラリンなど)と比べて有意に離脱症状が多く、浮動性めまい19.5%、回転性めまい5.3%、嘔気8.0%などの頻度が報告されています。

なぜ起こるのか(2つの離脱)

抗うつ薬の離脱症状はあまりメカニズムがわかっていない部分も大きいです。その中でも下の2つのメカニズムは有名です。

  • セロトニンの変化:抗うつ薬で再取り込みが活性化されていたセロトニンが、中止によって急に低下することで生じる
  • 抗コリン作用の離脱:抗コリン作用を持つ薬をやめると、抑えられていたアセチルコリンの働きが反動で強まり、吐き気・下痢・倦怠感・落ち着かなさなどが生じる

後述するパロキセチン(パキシル)は、この抗コリン作用が比較的強く、かつ半減期(薬が体から抜ける速さ)も短いため、2つの離脱が重なって症状が強く出やすいと考えられます。

起こりやすい薬

傾向代表的な薬剤(一般名/主な商品名)
特に強く出やすいパロキセチン(パキシル)
起こることがあるセルトラリン(ジェイゾロフト)、デュロキセチン(サインバルタ)、エスシタロプラム(レクサプロ)

特にパロキセチン(パキシル)の離脱症状は非常に強く出ることがあり、飲み忘れただけでも強い離脱症状を感じる方もいます。「効いていないから」「もう大丈夫だから」と自己判断でやめるのは絶対に避けてください。パキシルをやめる・減らす場合は、必ず主治医の管理のもとで、数週間かけて慎重に進める必要があります。

自己判断でやめると、うつ病自体が再発しやすくなる

離脱症状だけでなく、「本来の病気が再発するリスク」も見逃せません。加藤ら(2020年)による40件のランダム化比較試験(対象者計8,890名)のメタ解析では、寛解後に抗うつ薬を継続した群の再発率が20.9%だったのに対し、中止(プラセボへの切り替え)した群では39.7%と、約2倍の差が報告されています(オッズ比0.38、95%信頼区間0.33〜0.43)。

出典:Kato M, et al. “Discontinuation of antidepressants after remission with antidepressant medication in major depressive disorder: a systematic review and meta-analysis.” Molecular Psychiatry. 2021;26(1):118-133.

正しいやめ方の考え方

抗うつ薬をやめる時の基本は、数週間かけて少しずつ量を減らしていく(漸減)ことです。段階的に減らすことで、離脱症状を起こしにくくします。減らすペースは、服用期間・薬の種類・その人の状態によって異なるため、決まった正解があるわけではありません。症状が強く出る場合は、いったん元の量に戻したり、より減薬しやすい薬に切り替えたりといった調整が行われることもあります。

調子が良くなったと感じても、自己判断で薬を急にやめたり、減らしたりしないでください。急な中止は離脱症状だけでなく、上記の通り本来の症状の再発リスクも明確に高めます。やめるタイミングや減らし方は、必ず主治医と相談しながら進めてください。

こんな時は主治医に相談を

  • 薬をやめたい、減らしたいと考えている(特にパキシルを服用中の方)
  • 飲み忘れた翌日などに、めまいやシャンビリ感、手足のしびれが出た
  • 減薬を始めてから、つらい症状が出ている
  • 症状が「再発」なのか「離脱」なのか、自分では判断がつかない

うつ病そのものの治療の全体像については、うつ病とはの記事もご覧ください。

まとめ

  • 抗うつ薬を急にやめると、離脱症状が起こることがある
  • 「シャンビリ」や手足のしびれや吐き気が代表的
  • 特にパロキセチン(パキシル)は離脱症状が強く、自己判断での中止は非常に危険
  • 自己判断での中止は、うつ病自体の再発率も約2倍に高める(中止群39.7% vs 継続群20.9%)
  • やめる時は数週間かけて少しずつ。必ず主治医と相談を

この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。詳しくは免責事項をご覧ください。

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