抗うつ薬を飲み始めてから、「性欲が落ちた」「勃起しにくくなった」「なかなか達しない」——そんな変化を感じていても、恥ずかしさや言いにくさから、誰にも相談できずにいませんか。
これは決して珍しいことではなく、抗うつ薬の副作用としてよく知られているものです。この記事では、原因になりやすい薬と対処法について、精神科医の立場から解説します。
この記事のポイント
- 性機能障害は、SSRIなどの抗うつ薬でよく見られる副作用の一つ
- 薬の種類によって起こりやすさに差がある
- 恥ずかしさから相談しない人が多いが、対処法があるので主治医に伝えることが大切
- 自己判断での減薬・中止は禁物
- そもそも統合失調症・うつなどの精神症状が原因の可能性もある
- 糖尿病・アルコール・動脈硬化・末梢神経障害など身体疾患・心因性が原因のこともあるため、精神科の薬のせいにしすぎるのも注意
なぜ性機能に影響が出るのか
SSRI・SNRIなどの抗うつ薬は、脳内のセロトニンを増やすことでうつ症状を改善しますが、セロトニンの増加は同時に、性欲や性的な興奮・オーガズムに関わる神経の働きを抑制する方向にも作用します。より詳しく説明すると、鎮静、ホルモン変化、コリン作動性/アドレナリン作動性のバランスの乱れ、一酸化窒素の阻害、セロトニン神経伝達の増大が原因となっていると言われています。(モーズレイより)
その結果として、性欲の低下や、勃起・腟の潤いが得られにくいといった症状、オーガズムを感じにくい・時間がかかるといった症状が現れることがあります。
また、抗精神病薬には高プロラクチンを引き起こすことがあり、これも性機能障害の原因となりうると言われています。他、ドーパミン遮断によるリビドーの減少、抗コリン作用による性的興奮の阻害も原因と言われています(モーズレイより)
女性は特に月経不順がある場合は特に主治医に相談しましょう。
高プロラクチン血症についてはこちらから

しかし、うつ病自体が性的な欲求や性的興奮の障害、オーガズムの障害を引き起こします。うつ病患者の40〜50%が性的興奮に関する問題を報告したというデータもあります(モーズレイより)
具体的な症状
- 性欲(性的な関心)の低下
- 勃起しにくい、勃起を維持しにくい
- 腟の潤いが得られにくい
- オーガズムを感じにくい、時間がかかる、あるいは全く感じられない
原因になりやすい薬
| 分類 | 傾向 | 代表的な薬剤(一般名/主な商品名) |
|---|---|---|
| SSRI | 頻度が比較的高いとされる | パロキセチン(パキシル)、セルトラリン(ジェイゾロフト)、エスシタロプラム(レクサプロ)、フルボキサミン(デプロメール、ルボックス) |
| SNRI | 起こることがある | ベンラファキシン(イフェクサー)、デュロキセチン(サインバルタ) |
| 三環系抗うつ薬 | 頻度が比較的高いとされる | アナフラニール |
| 抗精神病薬(高プロラクチン血症を伴う薬剤) | 起こることがある | リスペリドン(リスパダール)、パリペリドン(インヴェガ) |
対処法として考えられること
性機能障害が疑われる場合、以下のような対応が医師の判断のもとで検討されます。
- 薬の量を調整する
- 性機能への影響が比較的少ないとされる薬への変更を検討する
- 必要に応じて、勃起障害に対する治療薬を併用する(医師の処方・管理のもとで)
- 泌尿器科に受診する
⚠ つらい症状だからといって、自己判断で薬を減らしたり中止したりしないでください。うつ病や不安症の治療を自己判断で中断すると、症状の再燃・悪化につながることがあります。対応は必ず主治医と相談しながら進めてください。
恥ずかしくても、まずは主治医に伝えてください
- 性機能障害は、薬を飲んでいる人にとって珍しい悩みではありません
- 医師は診療の中でこうした相談に日常的に対応しています
- 言い出しにくければ、「体の変化として気になることがある」と切り出すだけでも構いません
性機能障害は、治療の継続そのものを難しくしてしまう要因にもなり得ます。一人で抱え込まず、次の診察で率直に相談してみてください。
まとめ
- 性機能障害は、SSRIなどの抗うつ薬でよく見られる副作用の一つ
- 薬の種類によって、起こりやすさには違いがある
- 薬の調整や変更で改善が期待できることもあるが、対応は必ず主治医と相談すること
- 自己判断での中止は禁物。恥ずかしさに関わらず、まずは相談を
- 泌尿器科に受診することも一つ
- そもそも薬のせいではなく、糖尿病・心因性・精神疾患そのものが原因のこともある
この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。詳しくは免責事項をご覧ください。