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子どものかんしゃく、発達障害なの?

よくあるケース(架空症例)

以下は、患者さんのプライバシー保護のため、筆者が作成した架空のケースです。

7歳の男の子。保育園〜小学校で急に、部屋から飛び出して泣き叫ぶ状態が続いていました。時には壁に頭を打ちつける行動も見られていました。楽しいはずの遠足の日、みんな普段と違う動きやすい格好で普段と違う校庭に集合しました。その際にも激しい癇癪を起こし、先生を困らせてしまいました。保育園時代には、保育園の前の道路が工事しており、工事の音が響いていたことで、一日中泣き叫んでいました。初めは「わがままなだけ」と考えていましたが、よく観察すると、予告なく予定が変わる時、普段と異なる動きをした日に特に強く癇癪が出ること、特定の音を嫌がる様子があることがわかりました。専門機関での相談を経て、感覚面での特性に配慮した関わり方(今日の予定を図で事前に伝える、静かな環境を用意する、イヤーマフをつける、行事の日はあらかじめスケジュールを伝えるなど)を取り入れたところ、癇癪の頻度が徐々に落ち着いていきました。

「わがまま」と決めつける前に、癇癪が起こりやすい状況やきっかけを観察してみることが、対応のヒントの一つになります。

はじめに

大声で泣き叫ぶ、床に寝転がって暴れる、物を投げる——お子さんの癇癪に、どう対応すればいいか悩む保護者の方は多いと思います。「これは普通の発達段階なのか、それとも何か特性があるのか」という不安を抱く方も少なくありません。

この記事では、癇癪の基本的な理解、発達障害のサインである可能性がある特徴、そして保護者の対応について、きれいごと抜きで解説します。

  • 癇癪は、多くの子どもの発達過程で見られる自然な行動
  • 頻度が極端に多い、年齢不相応に激しいなどの特徴がある場合、発達特性が背景にあることもある
  • 自閉スペクトラム症(ASD)の場合、癇癪とは異なるパニックや易刺激性の亢進と呼ぶような現象から起きていることもあり、症状の一つである可能性もある。
  • 発達特性由来の興奮は、家族の工夫だけでは対応が難しいことが多く、抱え込まないことが大切。あまりに激しい場合は投薬も検討される。

癇癪とは

癇癪とは、大声を上げる、手足をバタバタさせる、物を投げるといった、感情の爆発を伴う行動のことです。自分の気持ちをうまく言葉で表現できない時に、不快感・苦痛・要求などが行動として表れたものと考えられています。特に2〜4歳頃(いわゆる「イヤイヤ期」)に多く見られ、多くの場合は成長とともに落ち着いていきます。

ASDの場合は易刺激性の亢進による興奮であることも

自閉スペクトラム症(ASD)の特性がある場合、こだわり・常同性(いつも同じであることを好む性質)・予定や環境の急な変化への苦手さ、感覚過敏などから、突発的な不安や恐怖による混乱状態が起こることがあります。これは臨床の現場で症状の一つと考えられています。

見た目には同じような「泣き叫ぶ・暴れる」という行動でも、背景にある性質が異なるため、対応の考え方も変わってきます。

発達障害のサインである可能性がある特徴

癇癪自体は自然な発達過程の一部ですが、以下のような特徴がある場合、発達特性が背景にあることも考えられます。

しかし、かんしゃく、暴れるその雰囲気だけでは発達障害があるのかどうかは全くわかりません!

診断に大事なのは、普段落ち着いている時の様子です。

よく診察で子供が暴れている時の動画を見せてくれる親御さんも多いですが、どちらかというと落ち着いている時の行動の方が知りたいな・・・・と思うことも多々あります。

  • 頻度が極端に多い、または年齢に比べて激しさが目立つ
  • 特定の音・感触・環境の変化など、感覚的な刺激がきっかけになりやすい(感覚過敏)
  • いつもの手順やルールが少しでも変わると、強い癇癪(パニック)につながる(こだわりの強さ)
  • 言葉の発達がゆっくりで、要求や気持ちを伝える手段が限られている

こだわり・反復行動に関するサイン

  • 同じような行動・動きを繰り返す
  • 物の配置に強くこだわる、物を一直線に並べたがる
  • 特定の分野の知識に強く偏っている(マニアックな興味)
  • 普段と違う動きや予定の変化で、癇癪(パニック)が起きやすい

乳幼児期からのサイン

癇癪そのものとは別に、より早い時期から見られることがあるサインとして、以下のようなものも知られています。

  • 首すわり・歩き始め・発語など、運動や言葉の発達がゆっくりだった
  • 目が合いにくい
  • 指差しをしても、その先を見ない(共同注意の乏しさ)
  • おままごとなど、ごっこ遊びをしない

こうした特徴が複数見られる場合、単に「わがまま」として片付けるのではなく、その子の特性に合わせた関わり方を考えることが大切です。

保護者の対応:きれいごとだけでは済まない現実

「気持ちを受け止める」「事前に見通しを伝える」といった対応は、確かに役立つことがあります。しかし正直にお伝えすると、発達特性由来の突発的な興奮やパニックは、家族がどれだけ工夫しても、その場でうまく対応することが難しいことが多いのが実情です。

もちろん、その子の特性やパターンに慣れてくることで、少しずつ対応しやすくなる面はあります。ただ、うまくいかないからといって、保護者の関わり方だけが原因とは限りません。家族だけで抱え込まないことが何より大切です。

また、多くの保護者にとって「そもそもこれが発達障害によるものなのかどうかも分からない」というのが、正直な状態だと思います。目の前の癇癪が、発達段階によるものなのか、特性による症状(パニック)なのか——この見極めは、保護者だけで判断しようとせず、迷ったら精神科や発達相談の専門家に相談することをおすすめします。

そして、

初回受診時には母子手帳と通知表を持ってきてください。

詳しくはこちらをご覧ください

精神科の初診で聞かれること | 何を話せばいい?医師の視点で解説
精神科の初診で何を聞かれるか不安な方へ。実際に確認される質問内容、持ち物、うまく話せなくても大丈夫な理由を精神科医が解説します。

こんな時は相談を検討してください

  • 癇癪の頻度・激しさが、年齢や周りの子と比べて明らかに目立つ
  • 特定の感覚刺激やこだわりが、癇癪と強く関係している様子がある
  • 言葉の発達、目が合う様子、ごっこ遊びの有無など、乳幼児期からのサインに気になる点がある
  • 保育園・幼稚園・学校生活に支障が出ている
  • 癇癪なのかパニック(症状)なのか、家庭では判断がつかない

相談先としては、かかりつけの小児科、保健センターの発達相談、児童精神科などがあります。園や学校での様子について、環境を整える工夫が必要になる場合は「学校に行きたくない」と言われたらの記事も参考になります。

まとめ

  • 癇癪は多くの子どもに見られる自然な発達過程の一部
  • 頻度・激しさが年齢不相応、感覚過敏やこだわりが背景にある場合は発達特性のサインのことも
  • ASDの場合、投薬がカギとなることがある
  • こだわり・反復行動や、乳幼児期からの運動発達の遅れのサインも判断材料になる
  • 発達特性由来のパニックは家族だけでの対応が難しいことも多く、判断に迷ったら専門家に相談を

この記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。詳しくは免責事項をご覧ください。

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